金融庁は1月14日、「仮想通貨の信用取引のレバレッジ上限を2倍にするぞ!」という方針を固めました。
こちらが日経新聞の記事です。
仮想通貨取引、証拠金の2倍まで 金融庁が新ルール
本件に関して金融庁が出している公式ページはこちらです。
令和元年資金決済法等改正に係る政令・内閣府令案等の公表について
仮想通貨のレバレッジ規制に関しては、業界関係者、個人投資家からの反対の声が多数上がっており、レバレッジ2倍がTwitterのトレンドに入ったほどでした。
現在金融庁ではパブリックコメントを募集しており、この記事を読んでいる皆さんは当然意見投稿をしたと思います。
…………
ええ、ええ。
皆さんの言いたいことはわかります。
まだしてないんですよね。わざわざそんな可愛い顔をしなくても大丈夫。怒ってないから。
「レバレッジ2倍の規制が嫌だ」と思うことはあっても実際にパブリックコメントを投稿するという行動に移す人が少ないだろうことは想像に難くありません。
大丈夫です。わかっています。
パブリックコメントの投稿なんてしたことないし、わかんないですもんね。
そこで!
誰でも5分でパブリックコメント投稿ができるように例文を作成しました。レバレッジ規制に反対票を投じたい方は今日、この記事を読んで、パブコメ投稿を行ってください。
いいですか。今日行ってください。今日ですよ、今日。
本パブコメの投稿期限は2月13日ですが、そんなことは関係ありません。今日投稿してください。
レバレッジ規制について書かれた条例はどれ?
今回の「令和元年資金決済法等改正に係る政令・内閣府令案等の公表について」に関しては26のPDFファイルがあげられています。
ただ「レバレッジ規制が嫌だ」と声をあげるのは、子どもの駄々っ子と同じです。意見を出すのであれば、当然どの改正案に対しての意見であるかを表明しなければなりません。どのファイルのどの条例が今回の規制に関するところなのかを確認しましょう。
ということでファイルを見ました。まったく、すごい大変でした。ほんとに!
今回のテーマになる条例があるファイルは赤枠で囲った2つです。
このPDFは別紙2が542ページあり、281~282ページに金融商品取引法で規制される個人のデリバティブ取引のレバレッジ規制についての記述があります。
別紙15は133ページあり、43~44ページに 資金決済法で規制される暗号資産信用取引について書かれています。
個人投資家として争点になるのは別紙2の内容、事業者目線も含めると別紙15の内容までが含まれます。
わざわざ見る人は全然いないと思うのでスクショします。
これが今回のレバレッジ規制に関する条例だ!!
仮想通貨交換業者に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令(案)( 金商業府令案)の117条41、42項 の内容
【監督指針、ガイドライン等】 (別紙15)事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係 16 仮想通貨交換業者関係)(新旧対照表) の Ⅱ-2-2-2 信用取引への対応 の ⑵ 保証金の管理 の④に書かれている内容
一応個人のレバ規制に関係する別紙2の117条41項、42項を抜粋します。ここは読み飛ばしてしまって構いません。
41項
第一項第四十七号及び前項の「約定時必要預託額」とは、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める額に百分の五十を乗じて得た額をいう。ただし、当該各号の暗号資産関連デリバティブ取引がこれらの取引に係るオプションが行使された場合に顧客が一定額の金銭を支払うこととなるものである場合において、当該取引について算出するときは、当該金銭の額をいう。
一 顧客が行おうとする暗号資産関連デリバティブ取引のみについて算出する場合当該暗号資産関連デリバティブ取引の額(当該暗号資産関連デリバティブ取引が次に掲げる取引である場合にあっては、零。次項第一号において同じ。)
イ 法第二条第二十一項第三号に掲げる取引(顧客がオプションを取得する立場の当事者になるものに限る。)
ロ 法第二条第二十二項第三号又は第四号に掲げる取引(顧客がオプションを取得する立場の当事者になるものに限る。)
ハ 外国市場デリバティブ取引であってイに掲げる取引と類似の取引
二 顧客が行おうとする暗号資産関連デリバティブ取引と当該暗号資産関連デリバティブ取引に係る契約を締結する時において行っている他の暗号資産関連デリバティブ取引について一括して算出する場合これらの暗号資産関連デリバティブ取引の額の合計額から前号イからハまでに掲げる取引に係る暗号資産関連デリバティブ取引の額を減じて得た額
42項
第一項第四十八号及び第四十項の「維持必要預託額」とは、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める額に百分の五十を乗じて得た額をいう。ただし、当該各号の暗号資産関連デリバティブ取引がこれらの取引に係るオプションが行使された場合に顧客が一定額の金銭を支払うこととなるものである場合において、当該取引について算出するときは、当該金銭の額をいう。
一 顧客が行う各暗号資産関連デリバティブ取引ごとに算出する場合当該各暗号資産関連デリバティブ取引の額 二 複数の暗号資産関連デリバティブ取引について一括して算出する場合当該複数の暗号資産関連デリバティブ取引の額の合計額から前項第一号イからハまでに掲げる取引に係る暗号資産関連デリバティブ取引の額を減じて得た額
https://www.fsa.go.jp/news/r1/sonota/20200114/02.pdf
なんのこっちゃですね。
これを日本語に翻訳すると、「仮想通貨の信用取引のレバレッジ上限は2倍まで!」となります。
※もし間違っていたら教えてください。
パブコメをあげる際には、自身の立場を表明するとともに、この改正案に対する意見であることを表明しましょう。
そもそもなぜレバ規制を行うのか
次に金融庁がなぜレバ規制を行おうとしているのかを確認します。
「ボクが稼げなくなるから」というのは投稿するコメントとして正しくありません。投稿は規制に対してただ単に反対票を投じるものではなく、金融庁が規制しようとする”理由に対する”反対意見でなくてはなりません。
金融庁が規制をしようとしている理由は3つです。
- 投資家保護
- 業者の財務的な健全性の確保
- 過当投機防止
つまり反対意見として出す内容は、レバレッジ規制は……
- 投資家保護につながらない
- 事業者の財務的な健全性の確保につながらない
- 過当投機の防止につながらない
という方向であったほうが良いでしょう。
これは大きくまとめると「投資家目線」「事業者目線」の2つに分類できます。
この記事を読んでいる人のほとんどは事業者としてではなく、個人投資家として意見表明をするものと思われますので、投資家保護の観点から思いつくものをリストアップしてみます。
反対意見の材料
1.追証ありのシステムでは、強制ロスカットされる可能性が高まる
レバレッジ上限が下がることで、同じだけのポジションを持っていても証拠金維持率が変化します。同一の証拠金に対して同一の数量のポジションを構築する際、レバレッジが高いときのほうが強制ロスカットになってしまう可能性は低くなります。
特に仮想通貨はボラティリティが高く急騰・急落が発生しやすい商品です。そのため上限レバレッジが低くなることで、急激な価格変動時に強制ロスカットされてしまう人の数はむしろ増加することになると思われます。
2.出来高低下によるボラティリティ急増リスクが増す
レバレッジの低下は出来高の低下を招きます。実際にレバレッジ上限が2倍の欧州では出来高が急落しており、代わりにハイレバレッジ&ゼロカットシステム採用の取引所に資金が流入している現状があります。
出来高が低下し、市場流動性が枯渇すると、取引の板が薄くなってしまいます。板が薄くなることは、投資家保護とは真逆の影響を及ぼします。一部大口による相場操縦が起きやすくなり、市場の健全性が損なわれます。
3.日本の仮想通貨取引所が使われなくなることで管轄外の海外取引所が使用されてしまう
レバレッジが2倍になることで、レバレッジ取引を求める個人投資家は海外取引所に流れてしまうことが予測されます。
日本の管轄外の海外取引所での取引が増えることが投資家保護につながるものであるとは考えにくいのではないでしょうか。
4.国内の仮想通貨事業者の収益性が悪化する
仮想通貨取引所のレバレッジ取引に関する収益源は
・取引手数料
・金利
・板のスプレッド
の3種類です。
レバレッジが2倍になることで、金利収入は大きく悪化するため、仮想通貨取引所は生き残りをかけて、板のスプレッドを収益の柱とする方向に舵を切らざるを得ないのではないかと思われます。これは取引の不透明化につながるものであり、投資家保護につながるものではありません。
もちろんこれが正解というわけではなく、ここに書いたものは私の一意見です。
言語化する際の参考材料にしてください。
事業者目線での反対意見も、この投資家保護の観点と根っこの理由は同じです。
更にこれを拡大すれば、国益につながらないということもできますね。
それではこれを踏まえて文章を作成します。
パブコメ投稿例文
投稿で書く内容はシンプルです。
「誰の立場で」「どの条例に対して」「なぜ反対しているのか」を書くだけです。
「誰の立場で」
個人で仮想通貨取引をしている〇〇〇〇と申します。
(金融機関に勤めていたり等、規制に反対するための権威付けができるような材料がある場合は自己紹介としてそのことにも簡単に触れる)
「どの条例に対して」
令和元年資金決済法等改正に係る政令・内閣府令案等の公表について、仮想通貨交換業者に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令(案)( 金商業府令案)の117条41、42項 の内容について意見を提出いたします。
(仮想通貨取引事業者の場合は、 事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係 16 仮想通貨交換業者関係)の一部改正(案)の II-2-2-2 信用取引への対応 の (2)保証金の管理 の4の内容についても併せて意見を提出する)
「なぜ反対するのか」
本条例では、投資家保護や業者の健全な財務性の確保のために暗号資産信用取引のレバレッジ上限を2倍へと引き下げるものであると理解しています。
しかしながら、××××の観点より、本条例は投資家保護につながらないものであると考えます。その理由は、△△△△です。
××××や△△△△には反対意見の材料で書いた内容を参考に自分なりに味付けした文章を入れてください。思いつかなければコピペでも構いません。
書く材料が決まっていれば5分もかからずに提出することができます。
意見投稿はここから行えます。
意見投稿フォーム
簡単ですね!
はい、今から5分以内に行ってください。よーい、スタート!
投稿しましたか?
投稿しましたよね?
まだ終わってない?
じゃあもう3分だけ待ちます。レバレッジ2倍に反対であれば必ずやってください。
はい、3分終了です。
投稿、お疲れさまでした!
自分で文章を作っていて、まだ書き終えてない人はせっかく途中まで書いたんですし、このまま書ききってしまいましょう!
レバレッジ2倍とする根拠が希薄であるという意見は多くの識者が言っているところです。だからこの金融庁もパブリックコメントを募集しているものであり、多くの意見が集まれば、前向きな検討がなされる可能性はゼロではないと思っています。
利用者の声を参考に、健全な議論が行われ、業界が発展していくことを願って止みません。
BBBでした。
※2020年1月20日
金商法で規制される個人のデリバティブ取引のレバレッジ規制に関する条文内容について加筆修正。