頭の良い人のほうが偽情報を信じる可能性が高い

誤った情報やフェイクニュースを見たときに、頭の良い人と悪い人ではどちらのほうが騙されやすいと思いますか?

普通に考えれば、頭の良い人のほうが騙されにくいと思うはずです。「頭が良い」をどう定義するのかにもよりますが、たとえば

  • 情報処理能力が高い人
  • 情報の出所(ソース)を確認する人
  • 文章の背景にあるものを読み取る力がある人
  • 判断を行うための知的資源を豊富に持っている人

など、何らかの情報を判断する上でプラスになる力を持っている人のほうが騙されにくいと考えるのは自然なことです。しかし実は頭の良い人のほうが騙されやすくなることがあることが研究によりわかっています。賢さが仇となりバイアスを強めてしまうのです。

今日は人間の主観の形成と主観への知能の影響に関する研究と知見を紹介します。

主観はデタラメに形成される

主観の形成過程について、ポーカープレイヤーのアニー・デュークはこう語っています。

主観の形成過程は、

  1. 何かを耳にする
  2. その内容を吟味し、真実か嘘かを判断する
  3. 判断を下したのち、主観を形成する

という過程ではない

実際の主観形成は以下のような経過をたどる。

  1. 何かを耳にする
  2. それが真実だと信じる
  3. その後、ほんのたまに、時間があったり気が向いたりすれば、その内容を吟味して真実か嘘かを判断する

つまり私たちは得た情報について、何はともあれとりあえず真実であると判断するように初期設定されています。

これと同じことをハーバード大学の心理学教授D・ギルバートも次のように言っています。

人間とは騙されやすい生き物で、信じやすく疑いにくい。実際、信じることはあまりにも簡単で、おそらく非常に避けがたく、もはや合理的な判断というより自発的な解釈に近い

これは抽象的な主観(=直接の経験を伴わず言語を介して得られる情報に基づく主観)という概念が進化の歴史の中では比較的新しく獲得されたもので、人間特有の行動であることに由来します。抽象的な主観に対して、具体的な主観とは自分の眼で直接見たものを信じることです。

私たちの主観形成プロセスは、精度よりも効率を重視するように確立されています。これは偽陽性は偽陰性よりも危険が少ないと進化が証明しているためです。たとえば目の前にライオンがいるときのことを考えてみます。そのライオンの存在を信じずに疑ってかかり様子を見る人と、とりあえず信じて逃げる人ではどちらのほうが生き残りやすいでしょうか。当然後者です。仮にライオンではなく、無害な草食動物だったとしてもそれで命を失うわけではありません。

主観が直接の経験で生まれる状況――特に命の危険があるような自然界――では高度な猜疑心を持つことはメリットがないばかりか、命を脅かす邪魔な感情です。人類が抽象的な主観という概念を手にしたのは、言語と文字を獲得してからでした。最古の文字は青銅器時代に発明されたものであり、約5,500年前であると言われています。数百万年にわたって染みついた自然界で生き残るための「とりあえず信じる」というシステムはたかだが5,500年で都合よくアップデートされるようなものではありません。

形成された主観は強固なものになる

また厄介なことに、一度形成された主観は凝り固まり、自分の主観を裏付ける情報を喜んで探し出し、同時に主観とは異なる情報は無視するか疑うかしてしまいます。この過程が何度も繰り返されることで、誤った情報がアップデートされ続け、誤った情報のまま主観はどんどん強固になっていきます。この情報処理のパターンを「意図的な理由付け」と呼びます。

自分の主観を裏付ける情報を探してしまう行為は、自身が2つの立場のうちのどちらかを選ぶときに顕著に発生しがちです。株式投資を行う際の情報収集、特定の政策に対する意見、きのこの山たけのこの里論争などを想像してみてください。
たとえば株式投資の場合、ある銘柄を買っていたらその銘柄が値上がりする理由をついつい探してしまうのが人の性(サガ)です。私も意図的な理由付けが働いてしまっていることがわかっていても、自分が買いポジションを持っている銘柄については値上がりする理由がすぐに思い浮かび、逆に売りポジションの銘柄については売るべき理由をいくつも思いついてしまいます。自分の主観を守ろうと無意識のうちに必死になってしまう性質からは逃げられません。

さらに多くのSNSやニュースサイトがこの志向を加速させます。

SNSやニュースサイトでは私たちが好きなものを特定した上でそれに関連した情報を見るように提案してきます。インターネットで得られる情報量は無限に等しいほどありますが、実際のところ、私たちはますます自分が望む情報の中に閉じこもってしまいがちです。これはSNSやニュースサイトが悪いわけではなく、人が持つニーズを満たすサービスが受け入れられるために、私たち自身がそういったレコメンドを行ってくれる仕組みを自ら選んでしまっているだけです。

主観がいとも簡単に形成され、その主観がどんどん強化されてしまう性質は私たちの判断を曇らせる結果を生みます。人が行う意思決定はすべて主観を元に行われるためです。

頭の良い人のほうが騙されやすい?

ここまで主観の形成プロセスと、その主観を強固なものにする「意図的な理由付け」について見てきました。しかし情報を取捨選択できる賢さがあれば、誤った主観を形成することや、その後の情報のアップデートで自分の考えを変えることもできるのはないでしょうか?

表題の『頭の良い人のほうが偽情報を信じる可能性が高い』について、ダン・カーンが行った客観的なデータの解釈に主観がどのように影響を与えるかについての研究があります。この研究では、頭の良い人のほうがバイアスの影響をむしろ受けやすい可能性があることが示されています。

カーンはまず被験者集団に皮膚の実験治療に関する複雑なデータを分析させ、この治療が発疹発生率を増加させたか減少させたかについての判断を下させました。この結果は予想通り、数学的能力が高い人のほうがデータを解釈して正しい結論を導き出す傾向を示しました。

次にまったく同じデータを用いて別の被験者集団に「皮膚治療」を「銃の携帯禁止」、「発疹」を「犯罪」に置き換えて実験を行ったところ、銃に関する被験者の理念がデータの分析結果に影響を及ぼしました。事前にリベラルであると判断された被験者は、「銃規制は犯罪を減らす」という理念に沿った形でデータを解釈し、保守主義者と判断された被験者は「銃規制は犯罪を増加させる」という理念に沿った形でデータを解釈したのです。この結果自体は意図的な理由付けの具体例として理解されるものです。

面白いのは同じ理念を持つグループ間で数学的能力による成績の差です。銃所持に賛成か反対かに関わらず、数学的能力が高い人は、能力が比較的低く同じ理念を持つ人に比べ、データを解釈する際のミスが多く見られました。

つまり数学的処理が得意な人は、自分の主観を裏付けるために数字を解釈するのが上手かったのです。頭の良い人ほど、自分の主観を裏付けるストーリーを構築し、自分の主張や意見に沿うデータを上手く正当化して体系化してしまうためです。

私たちは自分の持つ主観を守り、強化するように進化してきました。頭が良く、人が合理的な生き物でないことがわかっていてもこの仕組みから逃れることはできません。目の錯覚で歪んで見える絵を見たときに、それが実際には歪んでいないことがわかっていたとしても歪んで見えてしまうように、知性の高さや意志の強さだけでは意図的な理由付けに抗うことはできません。

情報を正しく判断するためには

ここからは私の意見になりますが、ある情報において正しいか正しくないかを白か黒かで判断できるものは少なく、多くは白と黒が混ざり合った灰色をしているものではないでしょうか。解釈の違いによって同じ情報でも正反対の意見が導き出せますし、そもそも複雑系の世界においてある情報が混じりっ気のない白だったとしても、その情報を元にした判断が正しいとは限りません。

そこでオススメなのが、「セルフディベート」と「プランBを持つこと」です。

「セルフディベート」では、自分が直感的に考える立場と正反対の立場に立って考え、自分の意見に対して反対意見をぶつけます。2つの意見のうち1つを採用するために一方を打ち負かすことが目的ではありません。ある意見が白と黒がどの程度の割合で混ざったものなのかを何となくで良いので見るために行うものがセルフディベートです。例えばある株式の銘柄を買うことを検討するときに、買う派と売る派にわかれて考えた結果、買い優勢が10、売り優勢が90だと判断を下したとします。このときに取る行動は売りになりますが、自信度はあくまで90%であり100%ではありません。ある判断が正解か不正解かは、算数の問題とは異なり常に0~100の間のどこかにあるものです。どれだけ自信があったとしても0や100にはなりえません。

「プランBを持つ」では、セルフディベートの結果に関連して、自分の行動がどうやら間違いだったらしいという結果が出たときにどうリカバリーをするのかを考えます。その名の通り、プランAが上手くいかなかったときに用いるものがプランBですが、これは最後の手段として用いるものではなく日常的に用いるものです。

私たちは判断を下している自覚がなくても、日常的に判断や選択を繰り返しています。何らかの判断を下す例は無数にあります。ある株式銘柄に対する投資判断、事業推進においてマーケティング予算をどう振り分けるのか、子どもに中学受験をさせるのかさせないのか、あるいは今日の夕飯は肉にするか魚にするかなど日常は判断に満ちています。
今晩は魚にしようと思ったけど、スーパーで肉が安く売っていたからやっぱり肉にすることにした、という日常的な判断も、ある意味セルフディベートとプランBを持った行動の結果の行動だと言えます。

自分の判断が正しいかどうかは確率的に表現されるものであり、100%はありえないこと。
常にプランBを持ち、いつプランAから撤退してプランBに切り替えるのかをあらかじめ決めておくこと。

これがバイアス軽減に多少は役に立つものであると考えます。

まとめ

  • 人は自分が見た情報をまず信じる
  • 一度形成された主観はどんどん強固になる。これを意図的な理由付けと呼ぶ
  • 数学的能力の高い人のほうがむしろバイアスにかかりやすい
  • 「セルフディベート」と「プランBを持つこと」によってバイアスは多少回避しやすくなる

以上です。

参考文献

『明日の幸せを科学する』
ダニエル・ギルバート 著

『確率思考 不確かな未来から利益を生みだす』
アニー・デューク 著

『2100年の科学ライフ』
ミチオ・カク 著

『進化心理学から考えるホモサピエンス』
アラン・S・ミラー 著

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